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ようこそ今井研究室のページへ.このページは,今井研究室に興味をもっている管理工学科の学生さん向けに作られたページです. (2024.09.21update)
はじめに
テクノロジーの進展により,世界の環境,社会,産業は大きく変わろうとしています.
金融関連でいうと,Fin-tech, Insure-techと言う言葉が生まれ,ブロックチェーンを利用した新しいビジネスが,生まれはじめています.
これらは,既存の金融業界の枠組みや制度を大きく変えていく可能性があります.
そのため,既存の金融『業界』から見ると,これらの新しい動きは脅威に見えます.
一方で,世界経済における『金融の役割や機能』の重要性は依然として重要です.
すなわち,現在起こっている変化は,業界構造の変化であって,金融産業それ自体の重要性は全く変わっていないと思われます.
この事実を踏まえると,これから社会に進出していく学生さんにとって,このような環境の変化はまたとない大きなチャンスになります.
何故なら,既存の慣習ではなく,新しい環境に適応できる柔軟性のある人材こそが必要とされる時代だからです.
今井研究室では,過ぎ去った過去の常識や慣習を学ぶのではなく,新しい時代に対応できる本質的な能力を備えることを目指した研究活動を行っています.
主な研究分野 = Investment Risk Management
今井研究室で取り扱っている研究分野は,『Investment Risk Management(投資リスク管理)」と呼ばれています.この分野は,金融・実物投資におけるリスクの特定 ,評価 ,そして管理を行う学術分野です.具体的には ,以下の内容が含まれます.
リスクの種類:市場リスク ,信用リスク ,流動性リスク ,為替リスク ,金利リスクなど ,投資活動に伴う様々なリスクを理解・分析すること.
リスク評価の方法:リスクを定量化するための手法(VaR: Value at Risk, CVaR: Conditional Value at Risk など)や ,ポートフォリオ内でのリスク分散の効果を分析する.
リスク管理の戦略:ヘッジ(リスクの一部をカバーする手法)やデリバティブ(金融派生商品)の使用 ,分散投資など ,リスクをコントロールするための実践的な手法.
金融規制とリスク管理**:金融規制(例:バーゼル規制)に関連するリスク管理の枠組みや ,それが投資活動に与える影響を研究.
主な分析ツール:としては,
応用数学(確率, 統計,最適化,シミュレーションetc ),プログラミング,心理学(行動経済学,行動ファイナンス),経済学(ゲーム理論,意思決定理論etc)
が挙げられます.
典型的な研究分野
金融モデリングの研究
過去の証券価格のデータを情報源としてそこから証券価格の法則性を見いだし,モデル化を行い,そのモデルを用いて最適な投資戦略を構築することを考えます.
どのような資産カテゴリー(株式,債券,デリバティブ,国内,海外,為替など)を考えるのか,どのような基準でさいてきかをするか,など様々なバリエーションがあります.
最近では,非金融商品(パンデミック感染症のモデル,CO2排出権の価格,未上場スタートアップ企業の価値)などの調査分析も始まりました.
・2023年10月11日 東証「J―クレジット」市場開設(日本経済新聞),J-クレジット制度
マネジメントの最適な決定
リアルオプション・アプローチは,今井研で長い間研究を行ってきている分野です.詳しくはこちら.
また,他大学の先生と確率も割り当てられないような状況(曖昧性ambiguity)や,めったに起こらないが起こったときの影響が甚大なイベントについてのリアルオプションを研究しています.
この考え方は,同じく研究室で行っている,スタートアップ企業の企業価値分析や,CO2削減事業の事業価値を推定するときの基幹技術となり得ます.
ADPRL (近似動的計画&強化学習):Approximate Dynamic Programming & Reinforcement Learningプロジェクトの下,様々な数値計算手法の開発を行っています.
- ・準モンテカルロ法 (Quasi-Monte Carlo Method)
- ・マルコフ連鎖モンテカルロ法
- ・モンテカルロ・フィルター,シーケンシャル・モンテカルロ法
- ・マルチレベル・モンテカルロ法
などがあげられます.
金融商品の分析,開発
- 現存する複雑な金融商品の有効性・妥当性の検証したり,ある課題を解決する新しい金融商品の提案をしています.
- ・航空券に含まれるオプション(プライス・フリーズ)
・防災への投資のための資金調達に利用するカタストロフィー債の提案(共同研究中) - ・CoC債の最適なトリガー
- ・ESG デリバティブの分析
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金融商品の分析,開発
- 現存する複雑な金融商品の有効性・妥当性の検証したり,ある課題を解決する新しい金融商品の提案をしています.
- ・航空券に含まれるオプション(プライス・フリーズ)
・防災への投資のための資金調達に利用するカタストロフィー債の提案(共同研究中) - ・ESG デリバティブの分析
金融市場の実証分析
金融3研究室に共通している研究分野だと思います.・スタートアップ企業の成功要因 with ベンチャーキャピタル
・オプション市場の実証分析(この夏開始)
・水素指数市場
・エネルギー市場,電力価格市場
・東証高頻度データの分析大学で求められる役割について:ベストプラクティスから理論モデルの構築へ
近年,データサイエンスという言葉が盛んに使われることからわかるように,データを分析することの重要性が盛んに喧伝されています.
ハンス・ロスリング, オーラ・ロスリング , アンナ・ロスリング・ロンランドの有名な著書「ファクトFACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」にあるように,データと事実に基づいて世界を正しく理解する習慣を身につけることは極めて重要です.
一方,研究室では,優れた理論(あるいはモデル)の重要性も強く意識しています.
クリステンセンの最新刊「イノベーションの経済学」からの引用です.
***
優れた理論があると,物事を動かすメカニズムを理解しやすくなる.空を飛ぼうとした人類の歴史を振り返ってみよう.かつての学者は,空を飛ぶことと,羽根と翼のあることの間には強い相関があると考えた.何百年も前から,人は体に翼をくくりつけて飛ぼうとしてきた.舞い上がる鳥を見てあの翼と羽根があれば飛べるに違いないと考えたのだ.
空を飛ぶ鳥をまねて,これが『ベストプラクティス』だと考えたとおりに翼をくくりつけ,懸命に両腕をバタバタさせて教会の塔から飛び降り・・・地面に衝突した.翼と羽根はたしかに飛行との相関があるのだが,”空飛ぶ人間”になろうとした彼らは,ある種の生物に飛行能力をもたらす基本的な因果メカニズムを理解していなかった.そこが敗因だった.
翼の形状や羽根の量にも意味はあるものの,人類の飛行を画期的に進歩させたのは数学者ダニエル・ベルヌーイが流体力学の研究をまとめた著書「Hydrodynamica」である.1738年に出版された本では,揚力の概念を説明することができる.ここにきてようやく,焦点が相関(翼と羽根)を離れ,因果メカニズム(揚力)に移ったのだ.現代の飛行技術の始まりはこの理論の誕生になると言って良い.
メンバーについて
今井研では"Mission"として,次のような2項目を掲げています.
1. 『社会に貢献する研究活動に取り組み,その成果を塾外に対して発表する』
そのために,
向学心をもって努力する人を積極的に支援します.研究の成果を追求しますが,同時にそこへ至るプロセスも重要と考えています.
前例を安易に踏襲するのではなく,自分たちで考え,自分たちで積極的に行動する学生に期待しています.
2.『 国際舞台で高度な知的貢献が継続的にできる人材を育成する』
そのために,
個々人の能力向上だけでなく,集団活動も重視しています.必要に応じてチーム・プレーがきちんと出来る誠実な人材を求めています.
国際化に対応するため,最低限の英語によるコミュニケーション力は,必要不可欠であると考えています.これまで,今井研には中国,ドイツ,フランス,スペインからの留学生が来ており,今井研からは,アメリカ,フランス,ドイツ,イタリア,スウェーデンへの留学を行った学生がいました.現在も一人留学予定中です.
OB & OG
卒業後の進路は,管理工学科らしく,金融に限らず多岐にわたっています.
詳細は,研究室の説明会にて.
事実を知る
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2024年度版 2024/09/21