松林研究室:新4年生募集(2023年度入室用)

ビジネス・エコノミクスを専門的に学びたい方、一緒に頑張りましょう!

研究内容

主たる研究分野はビジネス・エコノミクス、ゲーム理論です。経営上の戦略的意思決定問題を、ゲーム理論等の経済学的アプローチにより数理的に分析します。現実のビジネスやマネージメントの問題(マーケティング、提携、参入、プラットフォーム、サプライチェーン、ソーシャルネットワーク、IT、組織・・)から面白そうなテーマを拾ってきますが、その分析は(ケーススタディでもなく、データ分析でもなく)数理モデルを通じて理論的に行います。

修論・卒論

卒業研究の進め方

  • 春学期においては、輪講等によりこの分野への理解を深めつつ、研究テーマの絞込みを行います。春学期の終了時点でテーマを最終決定し、以降は具体的な分析を進めていきます。
  • 上記はデッドラインであり、大学院進学希望者については、より早い段階からの着手を推奨します。もちろん、就職希望者についても、早い段階からの着手は相談次第でいくらでも可能です。
  • 卒業研究に際しては、テーマの選定→分析→結果のまとめ→プレゼンテーション、という一連の研究プロセスをバランス良く習得することを目標にします。ただし、大学院進学者については大学院での研究への導入という位置づけを意識し、テーマ選定と分析の部分を特に重視します。

大学院での研究の進め方

  • まず、自分なりに興味のあるビジネスやマネージメントの問題をピックアップし、その分析の方向性を検討することで研究のモチベーションを確かなものにします。その上で、テーマに関連した論文を読んで参考にしつつ、問題を数理モデルに帰着させます。以降は、定式化したモデルを解析し、結論を導き出していきます。
  • より理論的な問題に取り組んでみたい人は、まずゲーム理論に関する最新の論文を丁寧に読み込むところから出発し、理論を発展させることを目指します。このプロセスはとても地道ですが、一方で限りなくアカデミックです。
  • いずれにしても、成果次第で対外発表の場(学会等)をどんどん紹介したいと思っています。自分の研究を他人に聞いてもらう/読んでもらう、という経験は社会に出てから『絶対に』役立ちます。
  • ともすると大学院生は自分の研究テーマだけに執着してしまう傾向がありますが、それでは視野が狭くてあまり役に立ちません。そのようなことを避けるために、当研究室では大学院生は、学部生の発表やあるいは企業の方とのディスカッションの場などに可能な限り参加し、議論に加わってもらうようにしています。


2022年度の卒業論文のテーマ

現時点でのテーマは以下の通りです。今後の進展度合いによって変更される場合もあります。

  • プレミアム・ストアブランドの提供における製造・小売業者間のコラボレーションに関するモデル分析
  • Two-sided marketにおけるコンテンツ提供プラットフォームのサービスラインナップ戦略
  • リポジショニングコストを考慮した生産量競争下での企業の新市場参入戦略
  • グリーン製品提供における技術提携モデルに関するゲーム理論的分析 
  • 非対称な市場におけるプラットフォームとサービスプロバイダとの間の提携戦略
  • ブランドスピルオーバーが存在するもとでのブロックチェーンの適用に関するゲーム理論的分析   
  • オープンイノベーション型プラットフォームにおける収益分配に関するモデル分析

2022年度の修士論文のテーマ

現時点でのテーマは以下の通りです。今後の進展度合いによって変更される場合もあります。

  • ブランドスピルオーバーが存在するもとでの自社ブランドを持つ企業のテナント誘致戦略
  • 代替構造が非対称なクールノー寡占市場における提携の安定性の一般化
  • Reference Group Effectの存在下でのプラットフォームの広告・課⾦戦略


輪講

基本的にゼミは週2コマ行います。(曜日等は応相談)

1.ビジネス・エコノミクス
Oz Shy著 "Industrial Organization: Theory and Applications" を使って、経営の問題をゲーム理論やミクロ経済学を用いて分析するための基礎を学びます。3年生までの「経済原論」や「情報経済学」、「数理経済学」等の授業の復習もかねています(ただし、メンバー次第で復習の必要が無い場合にはその部分はスキップします)。いろいろなトピック(独占・寡占の理論、合併・提携、市場参入、R&D、ネットワーク、広告戦略、価格戦略、製品戦略、チャネル戦略・・・)を「広く浅く」学んで、この分野全体に理解を深めることを目標とします。従って、読みこなす英文のボリュームは必然的に多くなりますので、英語の勉強にもなるでしょう。

2.経済学的分析のための数学
Mas-Colellほか著 “Microeconomic Theory(この本はミクロ経済学のスタンダードなテキストとして世界中の大学で使われているものです)のMathematical Appendixを使って、経済学的アプローチを用いる上で必要な数学的基礎(凹・準凹関数やKuhn-Tucker条件など)を勉強していきます。これらは授業でも既に習っていますが、研究をする上ではこれらを「キチンと理解している」ことが重要ですので、そのレベルに達することを目標にします。また、合わせて「理論書」を丁寧に読む力を養います。
ただし、後者は春学期のみ行い、秋学期の同時間帯は卒業研究の進捗報告にあてます。

合宿(またはセミナー)

今年は8月29日に矢上で集中セミナーを行いました。4年生のプログラムは大きく分けて2つです。1つはグループ形式によるプレゼン大会です。2~3人1組のグループに分かれて自由にテーマを選び、事前に入念な準備を行った上で、セミナー当日に教員と大学院生の前で発表し、ディスカッションを行います。毎年ケーススタディを扱った発表が多く、今年もフリマアプリ、動画ストリーミング、カフェチェーンなどの分野における企業が扱われました。もう1つは大学院生の研究発表の聴講です。4年生といえども、質疑応答がノルマ化されているため、真剣に聞くことが要求されます。4年生自身の勉強になるだけでなく、たまに出る鋭い質問は大学院生や教員への良い刺激にもなります。

説明会のスケジュール

以下の日程で説明会を行いますので、興味のある人はぜひ覗いてみてください。いずれも対面で行いますが、教員が対応する回(下記の(2)、(4)、(5))についてはオンラインでも参加できるようにする予定です。詳細については学科で別途用意されるBox上の資料を見るようにしてください。

  •  (1)10月25日(火)14:45~15:15 学生のみで対応
  •  (2)10月25日(火)15:15~16:00 教員が説明
  •  (3)10月27日(木)16:45~17:15 学生のみで対応
  •  (4)10月27日(木)17:15~18:00 教員が説明
  •  (5)11月4日 (金)5限の随時  個別に質問・相談等に対応
  当研究室に応募する可能性がある場合は、(2)または(4)のいずれかには必ず出席(オンライン参加可)するようにして下さい。(1)、(3)、(5)については任意で構いません。それ以外の時間帯については、個別にリクエストがあれば可能な範囲で対応します。

今年度卒業予定者の進路

1.修士
  • PwCコンサルティング
  • ANAウィングフェローズ・ヴイ王子
  • あずさ監査法人(公認会計士試験合格)
2.学部
  • JAL
  • 三菱商事
  • 慶應義塾大学大学院進学(4)

入室に関する情報

これまでの入室に関するデータをこちらにまとめてあるので参考にしてください。パスワードは講義資料と同じです。

教員からのメッセージ

 研究室を選ぶ上で皆さんが気にすることの一つは「社会に出てからこの研究室でやったことが役に立つのだろうか?」ということでしょう。民間企業で8年間働いた私の経験から言えば、それは「本人次第でいくらでも役に立つ」ということだと思います。

 当研究室で扱っている、価格戦略やら製品戦略といったマーケティングや経営戦略に関わるトピックは、それこそどの会社でも直面するものであり、経営層や管理職の方たちは日々そのことで頭を悩ませ、また若手であっても企画や戦略部隊にいる社員たちはブレインとなってそのような仕事に直に触れることになります。しかし、そういったトピックについて、この研究室ではモデルを通じて理論的に分析するというアプローチをとります。これは会社の業務の中では通常行いません。モデルを用いて分析する目的は、いろいろな競争や協調行動に共通する基本法則、メカニズムを明らかにすることにあり、目の前に直面する個別の問題はそのような一般的なツールだけでは捌き切れないからです。しかし同時に、様々な利害が複雑に絡み合う中で仕事を進めていくに当たって、基本的な法則や考え方をマスターし、積極的に活用しているのといないのとではアウトプットに大きな違いが出ているように私は思います。現に、会社の中枢でビジネスを引っ張っているエリート達はそれが出来ていると感じます。もちろん、ほとんどの人がそのようなことを大学で勉強してきているわけではなく、経験の中で培った人もいるし、あるいは本能的に理解している人もいます。でも、だからこそ大学の段階で本腰を入れて学んでから社会に出るというのはその後に対する大きなアドバンテージになると私は思います。

 ただ、こういったことを「自分のものにする」には高いモチベーションと根気強さが必要です(「根気強さ」については、正直言うと、少なくとも修士課程までの3年間が必要であると感じています)。残念ながら、当研究室で単にゲーム理論の用語や均衡の求め方だけを覚えたとしても、全く仕事の役には立たないでしょう。よって、当研究室での研究内容に対してモチベーションの高い人を歓迎したいと思いますし、研究室に入ってからも「やる気のない人にやる気を起こさせる」よりは「モチベーションの高い人をどんどん引っ張る」方を優先させます。その点さえ理解してもらえれば、あとはいろんな人に来てもらえればと思っています。もちろんアウトプットは求めますが、研究スタイルはできるだけ各人の意向を尊重します。アットホームな雰囲気の中で切磋琢磨できるような研究室を作れたら、と思っています。

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